世界は2007年までアメリカやヨーロッパで大きなバブルを経験し、その後、そのバブルの広範囲な崩壊に苦しんでいる。以下は、その感想である。
人間の心理は合理的だろうか。答えは「ノー」である。合理的だと考えられる根拠はきわめて少ない。もしかすれば短期的には合理的かもしれないが、長期的には合理的でありえない。
こう考える大きな根拠は2つある。
1つは、人間には感情があり、それが状況によって左右されることである。人間の良い側面でもあり、悪い側面でもある。豊かになれば、お祭りになる。貧しくなれば、大いに落胆することもあろうが、発奮することもありうる。貧しい状況と豊かな状況とは、人間の感情に対して対称性をもたらさない。
もう1つは、社会的に、言い換えれば多くの国民にとって、長期的状況の不確実性が高いことである。一方、政府の政策運営は人気取りに陥りがちである。国民が短期的にしか物事を見ていないのであれば、その短期的な視点に基づいて、政治的に振舞うのが人気を得るための秘訣である。だから、あえて長期について見えないふりをする。
株式市場に関していえば、株価の上昇はほとんどの国民に幸福感をもたらす。このため、たとえそれがファンダメンタルズから乖離している可能性が高いと考えられても、株価の上昇に政策的に逆らうことは難易度が高い。一方、株価の下落を食い止める政策はすぐさま拍手をもって迎えられる。
多分、このようなバブルと崩壊の歴史は、形を変えて繰り返されるのだろう。「100年に一度」という政治家的な、いかにも客観性を装い、責任転嫁するかのような大袈裟なキャッチフレーズに誤魔化されないことが大切である。
2009/04/14