研究室の窓から身を乗り出すと、大文字山が見える。大の字は、実は送り火の点火のため用に階段になっている。その階段の部分だけ草の緑色が目立つ。大の字全体が広がる「草や灌木のキャンバス」はまだ薄茶色のままである。
これから京都の美しい季節が続く。中学から高校時代を思い出すと、この時期の奈良も美しかった。何がって、新緑と寺社の甍や門と水のある風景がである。桜の頃も美しいが、あまりにも平凡だろう。
これを書いていると、同僚が訪ねてきて、事務的な打ち合わせの後、教育体制に対する愚痴になった。席に戻って、再び窓の外を見ると、夕暮れである。曇っているが、文字盤に電灯の灯った時計台と、黄緑や赤味を帯びた楠の新緑の広がりがあり、すがすがしい。少し東に目を移すと(というのも椅子が西を向いているから)、平安神宮の赤い鳥居があり、次に吉田山の裾野が見える。今の吉田山こそ、緑が湧き上がっていると表現できる。
繰り返しておこう。京都や奈良を散策するのは、この季節だろう。
2009/04/16