川北英隆のブログ

改正産業活力再生法??

4月22日、改正産業活力再生法が成立した。昨年のリーマンショック以降、世界経済の荒波を受けて日本経済が大きく揺らいでいる。日本の著名企業もその例外ではない。大企業の経営破たんを未然に防ごうというのが、今回の法案の結論である。世界のトヨタでさえ大幅な赤字に陥るのだから、「すわ一大事」というのが政府の判断である。
改正産業活力再生法が成立した場合、この制度に基づいて資本出資を受けるだろうと既に報じられているのが、音響やカーナビのパイオニア、半導体のエルピーダメモリ、日立製作所である。そもそも、この制度の対象となるのが「国内従業員が1000人以上」であり「売上高が四半期で20%以上、または半期で15%以上減少している」企業とされているから、売上高の減少はともかくとして(というか、現状では多くの製造業がこの売上高に関する条件を満たすだろうが)、中堅から大企業に位置していなければ今回の制度の対象とならない。言い換えれば、この法律の大義名分が雇用を守ることにあるわけだ。
しかし、雇用を守ることと、大企業の経営を守ることは同じ意味を有しているのだろうか。短期的にはそうかもしれないが、長期的にはそうではない。というのも、ここではエルピーダメモリを議論はしないが、一方でパイオニアや日立製作所の業績はリーマンショックのあるなしにかかわらず芳しくなかった。一般論としていえば、そのような企業に対して、十分な吟味なしに公的な資金を注ぎ込むことが正しい政策なのだろうか。雇用の維持だけであれば、国有林野の維持管理のため新たな人員を雇用することだって考えられる。また、政府が企業経営に関与することが結果として望ましくないのは、4月16日のブログで述べたとおりである。
さらに、日本経済に活力をもたらすためには、大企業ではなく、もっと若々しい企業を対象にする方が近道だろう。小さい企業にリスクがあるのは承知できるが、といってその一企業ごとのリスクも小さい。大企業に大量の資金を投入することと比べ、小さな企業を多数相手にすれば分散効果が期待できため、リスク合計値がかえって軽微な可能性さえある。
結論は、以前からあった、大きい企業に力があり、安全だとの一種の妄想を捨てるのがいい。トヨタでさあ大幅な赤字に陥る時代、何が生じるのか予断を許さない時代なのだから。

2009/04/22


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