春、京都と東京を往復する新幹線の中で楽しみなのは、山の裾野を走る時である。今週、里の桜はほぼ終わりになったが、少し高い丘にはまだ桜の花がある。その淡い色の花が、山肌を染め始めた新緑と混ざっている。木々の新緑は単調でない。目を凝らすと、すべての広葉樹の色が異なっている。
春の山歩きは素晴らしい。京都に移ってからは機会に恵まれないが、旧甲州街道の笹子峠から御坂の尾根筋に上がると、大きな富士山が峰越しに、急に姿を現す。その白い残雪に尾根筋の新緑が重なって、「一汗かいて登ってきただけのことはある」と、リュックを下ろし、水筒の水で喉を潤したものだ。
山歩きは単純な動作の連続だが、それでも一歩一歩に微妙な差がある。一歩ごとに景色も変化していく。その単純さの変化が楽しいのである。奥深いとも言える。
2009/04/11