川北英隆のブログ

鉱工業生産・回復速度低下

5月の鉱工業生産(速報値)は前月比5.9%上昇した。非常に高い伸び率ではあるかぜ、回復テンポは順調ではない。今回は日経新聞の解説の見出し、「最終需要の回復鈍く」が正解であろう。
季節調整済み指数で生産が増加したのは3ヶ月連続である。一見、高い伸び率であり、生産活動が順調に回復しているようだが、問題もいろいろある。
まず、同時に公表された生産の予測指数によると、6月+3.1%、7月+0.9%と回復の速度が低下する見通しとなっている。3月以降の3ヶ月、いわば真空地帯の中を急速に戻したにすぎない。確認しておくと、リーマンショックの生じた昨年9月の生産水準が103.6、それが今年2月には69.5となり、33%も低下している。5月の生産水準は79.2であり、2月対比で14%回復したにすぎず、昨年9月対比では依然として24%下回っている。非常に低水準にあるから、もっと速く回復していいにもかかわらず、7月までの回復の見通しは物足りない。
第二に、季節調整を行わない原指数に基づいて前年同月と比べると、5月の水準は4月と大差ない。つまりこの1ヶ月をとってみても、回復がはかばかしくないと言える。確認しておくと、生産の前年同月比は4月が-29.5%、5月が-28.8%である。出荷は同じく-28.9%、-29.0%である。とくに出荷の回復が遅れ気味のように推察できる。
第三に、財別に見ると、資本財の回復が見られない。資本財の5月の水準は、生産、出荷とも、季節調整済みで見て2月の水準を下回っている。企業マインドが回復していない証拠であろう。
以上から、経済の現状はまだまだ要注意の段階を抜け出せていないと考えていい。次は7月1日の日銀短観に注目してみたい。

2009/06/29


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