GDPのブログを書いて思い出したのは、内閣府自身がGDPの前期との比を4乗して年率に直し、「瞬間風速」として公表していることだ。他の統計にはない独自の技法だ。何故、GDPだけ年率に直すのか不思議だし、思考的に誤りだろう。
そもそもGDP統計とは、いろんな基本統計を寄せ集め、一定の方式に基づいて推計作業を施したものである。基本統計には、サンプル数がほぼ全数に及ぶものから、ごく少数のサンプルだけで便宜的に計算したものまで、さまざまなものが入り混じっている。それだけに誤差が大きい。また、GDPの速報と確報と年報では、寄せ集められる統計の範囲にも差がある。基準年が変われば当然、過去の数値も変わる。言い換えれば、「0.1%、前期に比べて成長率が高かったので、どうしたこうした」なんて議論は怖くてできない。もう少しサンプルが多ければ、また計算方法を変更すれば、「0.1%、前期に比べて成長率が低かった」かもしれないからだ。
だから、そんな統計の前期比を4乗し、「成長率を大きく見せて、どうするんや」というわけだ。「誤差を大きくしてるだけやんか」ということになる。
それに、同じ前期比が4期連続してはじめて「年率なる成長率」が達成されることに注意を払う必要もある。そんな4期連続なんて奇跡はありえない。現在の成長速度がどの程度なのか、年間ベースで確認したいのであれば、前年同期比を用いる方がまだ適切だろう。前年同期比は過去の数値の影響を受けるとはいえ、GDPの前期比のようなデコボコがなく、均された数値である。その前年同期比の推移を観察すれば、経済が見えてくる。
好意的に解釈すると、日本の経済成長率が前期比では0%台になってしまったので、もう少し、文字通り景気良く見せるため、内閣府が「年率」を編み出したのかもしれない。でも、それなら政府の政策を自画自賛する方便でしかない。ただし、マイナス成長になったのでは逆効果だが。
2009/08/21