川北英隆のブログ

政権交代と企業

これまで、あえて総選挙のことを書かなかったが、結論として、大きな影響と効果を期待することが間違っている。もちろん、部分的な影響はいろいろあるだろう。しかし、あくまでも部分である。
第一に、近代的な国家において、経済活動と政治とが完全に連動しているわけがない。しかも現在、かつての企業が地域から離脱したように、企業は国からも離脱しようとしている。そのような中、政治で企業活動をコントロールできると思うことが間違いである。もちろん、政治から大きな影響を受ける企業がいくつかある。日本航空が典型だろう。しかし、政府をバックに活動する企業は本当の企業ではない。日本の企業と経済の歴史を振り返ると、いち早く政府の支配や規制から抜け出せた企業が発展している。要するに、民間、さらにいえば世界を相手にすることで、企業の創意工夫が試されるからに他ならない。
第二に、日本の政権が大きく常識を外すことはないと考えられる。今回の民主党もそうである。逆に、常識を外さないから日本経済が飛躍しないともいえる。一方、常識を外さないと判断できたから、今回の選挙で国民は民主党に、多分多くは消去法的に、一票を投じたのではないだろうか。東京の投票率の低さが、この消去法な投票を象徴しているように思える。政権を獲得した民主党として、反省すべき点だろう。
一方、自民党が敗れた理由は明らかである。あまりにも、自らを含め、既存の利権を尊重しすぎた。古い政治体質が尾を引きずっていた。投票に行って、京都の中心部においてさえ、ようやく歩ける程度の老人の多さに改めて気づいた。何年か後、これらの老人は投票しようにもできないだろう。奈良の実家の老夫婦がどうしたかは確認していないし、老人を軽んじるわけではないが、政党として、国民の生きる年数を加重し、どの年代に焦点を合わせるべきかを考えたほうがいい。
民主党政権に期待することはいろいろある。その重点を思いついたままに書いておきたい。
第一に、一票が持つ一票の重みを回復させることだろう。残念ながら、最高裁はその役割を発揮せず、定員に関する判決の歯切れが悪く、万年稚拙である(そう思っているから、審判にはいつも×を付けている)。そうであるのなら、政治的な対応にしか期待できない。自民党は利害がありすぎたため、定員に関する制度改革に消極的だった。あからさまな利益相反の状態にあった。しかも、それに批判的な都市部の票は選挙制度的に重みがなく、声がかき消されるという、むなしい状況を生み出していた。今度こそ、利害も少ないだろう民主党に対し、地方も都市も一票が一票の効果を有するような改革を期待したい。この状態が実現したとしても、地方を護ることは可能である。日本人はやさしいから、予算措置として地方経済に重点的に配分したとしても、それが極端ではないかぎり、誰も文句は言わない。それに、環境的な配慮をいくらでも付加できる。
第二に、政府財政である。残念ながら、政府債務がGDPを上回っている現在、予算には大きな制約がある。この点を十分に考慮し、毎年度の政府行動を策定してもらいたい。この点は、新しい政権といえども、過去を引きずってしまうのである。
第三に、国会議員の定員数を議論すべきだろう。議会で一票を投じるだけの国会議員であれば、国民として雇う意味がない。個人として地域的・物理的に目配せできる範囲と、政治的もしくは経済的な活動状況を対比して、議員数を再編すべきである。これは、最初に示した第一の視点と重なっている。
以上、今回のブログはあまり企業経営との関係がなくなってしまった。でも、独創的で強いリーダーシップを有する政権が登場するか、完全に浮世離れした政権が登場しないかぎり、政治がまともな企業の経営に大きな影響を与えるとは考えられない。つまり、政治的に通常の状態を保てているかどうかに関心を寄せていれば、それで十分である。この意味で、経済はあくまでも経済であり、政治を材料にして相場を動かすのは、今までの証券会社的な、売買してナンボ(いくらの儲け)の発想でしかない。

2009/08/31


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