今年2月を底に順調に回復してきた鉱工業生産だが、ここに来て天井にぶつかりそうになっている。高い天井ならいいのだが、低い、犬小屋(イヌさんごめん)のような天井である。
9月30日、8月の鉱工業指数が公表された。それを睨んでいると、一番重要な出荷が伸び悩んでいることとに気づく。生産は、過剰に積み上がった在庫を減らす努力が実ったため、まずまずの回復である。
出荷の内訳を眺めると、6月まで急速に回復してきた電子部品の回復が足踏み状態にある。その在庫が、水準は低いものの、増加に転じたのも気になる。今後、少し注意を払う必要があるだろう。
一方、回復速度のはかばかしくないのが資本財である。企業が設備投資を抑制しているからである。生産水準が元に戻っていないから既存の設備が過剰であり、企業として新たな投資意欲がわかないことを意味している。しかし、設備投資をしないから、生産水準が元に戻らないことも事実である。
本当のところ、まずは需要が回復しなければならないのだが、日本国内には需要が自律的に生まれる気配がない。では世界を見渡せばどうなのか。アメリカも中国も景気刺激政策を打ち出しているが、その効果も一巡しつつある。景気刺激政策が種火となり、設備投資や消費に火が着けばいいのだが、まだ確認できていない。とくに、欧州の経済は低空飛行を続けている。日本と同様、世界経済の足を引っ張りかねない状態である。
いずれにせよ、アメリカや中国の経済は、日本のように暗くはない。活力を秘めているから、期待していいと思える。しかし、両国に、世界経済を牽引し続け、リーマンショック前の状態にまで順調に回復させる力があるのかどうかは不確かである。まだまだ気を抜けない。
2009/09/30