鞆の浦の埋め立て・架橋事業に対し、反対派住民が県知事を相手取って埋め立て免許交付の差し止めを求めていた裁判で、広島地裁が反対派住民の訴えを認めた。画期的な判断である。これに実態が追いついてほしい。
崖の上のポニョは見たことがないし、鞆の浦にも行ったことがない。でも、鞆の浦の名だけは昔から知っているし、テレビで町の姿を見る限り、価値がありそうだ。
湾を埋め立て、橋と道路を設置することだけが発展ではない。このブログで少し前に同じ趣旨のことを書いたように、文化や景観や自然は立派な財産であり、それを維持することも重要な経済活動である。この意味で、今回の判決には裁判官の先見性が表現されている。ひょっとしてポニョのファンだったのかもしれないが。これは冗談として、政治が変わったことを受けて司法も変わるのだろうか。
とはいえ、「文化と景観と自然を守る」と宣言するだけでは、たとえば今回の場合、鞆の浦の住民に困惑と不便が生じるだろう。このため住民が、反対派と賛成派に二分されてしまった。
「文化と景観と自然を守る」ことと、住民の利便性をできるかぎり両立させなければならない。たとえばプラハの場合、旧市内が保存され、周辺部に交通手段が整備されている。完全な利便性は達成できないが、しかし旧市内は残され、観光資源となり、未来に対するプラスの遺産となる。経済でいう効用の最大化が図られるわけだ。
「残す」のか「開発する」のかの二者択一ではない。二者択一ではないので、「残す」と「開発する」の組み合わせも、その対象に応じてさまざまであろう。柔軟に、何が最も望ましいのかじっくりと考え、行動することが必要である。
2009/10/01