10年国債の流通利回りが上昇している。上昇幅はわずかだというものの、この状態とは日本全体に対してリスクプレミアムが要求されていることに等しい。
10/23に書いたように、日本の財政が危機的状態にあることを投資家が再認識している。何らかのリスクのある商品を投資家は通常では買わない。買うにしても、リスクのない場合と比べてプラスアルファの投資収益が期待できないといけない。これが鉄則である。
10年国債の流通利回りの上昇は(価格の下落は)、言い換えれば投資家がプラスアルファの投資収益、すなわちリスクに対するプレミアムを要求していることの反映である。どこまで国債に対するリスクプレミアムを高めるのかは、これからの市場と投資家との間での相談ごとである。
この国債に対するリスクプレミアムは、債券市場だけに止まらない。このため、問題が大きくなる。株式市場もまた、リスクプレミアムの影響を受ける。債券市場が混乱して金利水準が上昇すれば、企業に対しても悪い影響が及ぶ。当然、株価は下落する。リスクプレミアムの上昇によって株式が売りたたかれた段階で買えば、その後の値上がり益の可能性が高まるから、投資家に対する買いの誘因となろう。
新政権の政策がどこに着地するのかが定まらないことは、投資家が大損する可能性を高めている。財政の規模と税制が定まらなければ、債券市場の今後の予測が困難になる。予測が困難であることと投資リスクとはほぼ対応しているだろう。
政府として、財政と税制に関する方向性をできるかぎり早く示す必要が高い。つまり、リスクプレミアムを縮小させるには、財政に対する基本方針の確定を急ぐことが肝要だ。とはいえ、財政と税制に関する方向性を定めるにはこれからも時間がかかる。まずは投資家の不安を鎮めるために、市場との対話が不可欠だろう。
2009/10/30