川北英隆のブログ

銀行預金の禁止が必要?

今週、東京で議論をしてきた。その一連の議論から到達した一つのアイデアが個人に対して銀行預金(銀行に類した機関を含む)を制限することである。
日本の個人金融資産の最大の特徴は銀行預金に偏っていることにある。一方で株式、債券、投資信託の保有比率が小さい。銀行が金融仲介機関として個人の資産を大半を集め、経済活動に提供してきたことになる。
では、銀行の金融仲介機能が健全なのだろうか。
日本の高度成長期には銀行は不可欠だった。銀行に集まる資金が不足し、企業に対する資金供給、すなわち貸出に優先順位を付けないといけなかった。究極のところ、優先順位付けのために当時の経済産業省、大蔵省、日本銀行が機能を発揮していたと言っても過言ではない。
現在、銀行に過剰な資金が集まっている。このため、銀行は集まった資金を国債に投資しなければならない。さらに、証券会社が仕組んだ複雑な証券に投資することも日常的に行われている。とくに地方の金融機関がそうである。証券会社が日本中、くまなく行脚し、仕組み債を売ってきた。
このような現状が健全だとは誰も思わないだろう。「でも、仕組み債が健全でないことは理解できるとしても、国債の保有は健全では」との反論があるかもしれない。しかし、銀行の役割は審査能力を発揮して、倒産するリスク(貸した資金が返ってこないリスク)を評価し、そのリスクに見合った利子を徴収しつつ、企業の事業遂行を支えることにある。信用リスクのない国債に投資するくらいのことなら誰にでもできる(というのは言い過ぎだが、ちょっとした能力さえあれば至極容易だ)。日本の銀行がそんな簡単なことのために優秀な人材を集め、営業しているというのは日本経済全体の無駄である。さらにいえば、銀行がいつでも国債や地方債を買ってくれるから政府の歳出の無駄が続くとも言える。
ということで、政策として何をすればいいのか。まず、定期預金には一人当たりの限度額を設けるべきである。日本のすべての銀行間で名寄せをすれば、限度額管理が簡単に行える。同時に、定期預金を預金保険の対象から外してはどうか。一方、流動性の目的から預けられる当座預金や普通預金にも限度を設け、それを超えればマイナスの利子率にすればどうか。銀行は流動性という便益を与えているから、それに見合った対価を預金者から徴収してもいいはずだ。
では、これまでの預金者は金融資産をどのように運用すればいいのか。とりあえずは国債を個人が直接購入することが手っ取り早い。それが嫌なら、投資信託を含め、他の有価証券を買えばいい。
以上は極論かもしれないが、この位のインパクトを与えないと日本の金融は堕落し、世界から劣後したままで終わる(もっと劣後してしまう)可能性が高い。

2009/10/31


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