川北英隆のブログ

デフレの本質1

20日、政府が月例経済報告で「緩やかなデフレ」を認定した。かつては01年3月から06年6月まで「デフレにある」としていたから、3年5ヶ月ぶりのデフレ認定である。ここで、政府がデフレ認定することの意味と意義を考えておきたい。
ここでデフレ認定したのは7-9月期GDPが名目ベースでマイナス成長だった影響が大きいだろう。実質ベースでかなりのプラス成長だったにもかかわらず、である。
もう一つは、日銀に量的な金融緩和を一段と強化させるよう、圧力をかけたと憶測されている。日銀による国債の購入額を増やさせることができれば、量的な金融緩和が強化される。国債の流通利回りも低下し、政府が新規に発行する国債(借金)の金利も減らせる。金利が低下すれば、企業の借入金利も低下する。こういう狙いがあったというわけだ。
では、金利(利子率)が低下すれば需要が増え、デフレから脱却できるのだろうか。この道のりは非常に遠いだろう。企業の設備稼働率が低く、稼働率の上昇は輸出頼みであり、その輸出の競争が激化しているからである。
物価が下落している根元は、需要が不足していることにあるのではない。結果として需要が不足しているだけである。需要不足を生み出している原因に迫らなければなければ、小手先の政策を繰り返すだけである。
最近、分析したところ、円安になれば企業が生み出す付加価値率(営業利益と人件費と減価償却費の合計額を売上高で割った比率)が低下することを見つけた。常識と反する結果である。というのも、日本はドル建ての輸出が多いから、円安になれば円ベースの手取りが増え、企業(そして企業で働く従業員)が潤うはずだと思っていたからである。
このような常識的でない分析結果を整合的に説明するには、円安になったとき、企業はドル建て価格を引き下げ、輸出攻勢をかけると考えるより他にない。円安時に輸出攻勢をかけるのは、企業に製品競争上の余力がないからである。(もう少し正確に説明しておく。他の条件が変わらなければ、日本は輸出超過の国であるから、円安によって企業部門全体は潤う。現実の企業経営において、円安が付加価値率の低下をもたらしているのは、円安による輸入原材料単価の上昇分に見合った国内製品価格の値上げができていないか、輸出ドル価格の引き下げをしているからである。)
円高のときには息を潜め、円安になると元気になる。急坂の時には今にも倒れそうだが、下りになると「元気やで」と走ってみせる、そんな強がりの山登りみたいなものだ。

2009/11/21


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