貿易収支が赤字になっても、経常収支は大幅な黒字だからいいのではないかという見方がある。確かに海外から日本に支払われる投資収益が急激に増加しているため、経常収支の対GDPの規模は縮小していない。
確認しておくと、国際収支統計上、現時点における貿易収支と経常収支の開きは、その大部分が海外から日本に支払われる投資収益である。
貿易収支と経常収支には、その性質上、大きな差違がある。その差違とは何か。答えは、貿易収支とは毎年、日本人と企業が働いて稼ぎ出した余剰であるのに対して、現在の経常収支の黒字の大部分をもたらしている海外からの投資収益とは、過去の蓄積から得られた稼ぎでしかない。これから以降、海外への投資が続かないとすれば、海外から得られる投資収益はじり貧になってしまうだろう。
同時に、海外から得られる投資収益とは、投資家が「日本よりも海外の方が魅力的だ」と考えた結果でもある。ある意味で日本を逃避した資金が稼ぎ出した収益であることに注意が必要である。海外からの投資収益が増えたからといって、それが日本国内に還流し、そのまま留まる保証はない。日本に魅力がなければ、むしろ、再び海外に向かう可能性が高い。
まとめておくと、これから先、海外に投資する資金が続かなければ、経常収支の黒字が対GDPで見て、縮小しまうかもしれない。また、日本に魅力がなければ、経常収支が黒字であったとしても、その資金が国債の購入に向かう可能性は低いと考えられる。
2009/11/18