貿易収支が赤字なのに国債を大量に発行すれば、その国の経済が破たんするのか。必ずしもそうではない。両方ともに赤字でありながら破たんしない国の典型事例がアメリカである。ということは、日本も安心なのか。
アメリカは貿易収支の赤字が続き、財政も赤字気味である。ただし、国債(国の借金)の累積額は日本より軽微である。リーマンショック後、大量に国債を発行しているにもかかわらず、まだ名目GDP規模には達していない。もっとも、アメリカの2009年度(2008/10-2009/9)の財政赤字が1兆4147億ドルとなり、名目GDP の10%を超えたことが話題になった。その時には、アメリカドルの信認が低下するのではないか、アメリカドルの価格が凋落するのではないかと懸念された。
日本とアメリカの違いは、第一に累積の財政赤字の規模である。日本の方がはるかに重い。そもそものところ、アメリカが大丈夫だから日本もとは言えないわけだ。
第二に、アメリカ経済は、一国の規模としては圧倒的に世界一であり、いわば「腐っても鯛」である。たとえ本音ではアメリカを見捨てたいと思ったとしても、現在のところ、どの国もアメリカ抜きでは生きていけない。だから、アメリカのドルを買い、アメリカ国債を外貨準備として、いやいやかもしれないが保有している。「日本抜き」でもあまり不自由を感じない世界の実態とは大差がある。
第三に、アメリカ政府はともかくとして、アメリカ企業には魅力が尽きない。インテル、マイクロソフト、グーグル等、次々に革新的な技術が生み出されている。だから、アメリカに(政府ではないかもしれないが、民間企業に)世界から資金が流れる。では、日本はどうなのか。残念ながら、魅力的な大企業がない。大企業未満には魅力的な企業もあるが、日本国全体を引っ張る力としては不足している。
以上のように考えると、アメリカのように超然とは、日本は振る舞えない。赤字を縮小する努力が求められるのである。そのアメリカでさえ自国の権威と信認を保つためにあれこれ努力しているわけだから、日本はなおさらである。
2009/11/19