9月末の決算状況が続々公表されている。そこで気になることがある。主要企業の業績の推定値が、公表日の少し前に新聞の紙面を飾ることである。昨日はさらに、日本航空の決算概況が国土交通省の大臣によって事前に公表された。
大臣の前原氏は13日の閣議後の記者会見で、夕方に公表予定の日本航空の2009年4?9月期決算について、「大変厳しいものになる」との見通しを示し、「事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請するとの報告があった」との主旨の記者会見を行った。
本来、企業業績に関する情報公開は当該企業自身が行うべきものであり、それまでの間、内部者以外の者に公表前の情報を伝えるべきではない。監査法人や社外取締役等の関係者には業務上、伝える必要性があるものの、これらの者は内部者を形成しており、彼/彼女らが業績に関する情報を外部に伝達することは望ましくない。また、何らかの特殊な理由で情報の伝達を受けた外部者が、その情報に基づいて証券を売買すれば、インサイダー取引の禁止規定に違反してしまう。
ということで、企業とすれば、投資家の投資意思決定に重要な影響を与える情報(決算数値など)を、たとえ新聞記者であっても、その情報が企業によって公表される前に外部者に伝達することは慎むべきである。また大臣が業務上やむをえず業績に関する重要な情報を知ったとしても、その情報を企業自身が公表する以前に、外部に伝えることは望ましくない。さらに言えば、監督官庁の関係者が被監督企業の情報をどうしても外部に伝えたいのであれば、その企業の責任者を同席させ、彼/彼女の口から語らせるべきだろう。
思うに、日本社会では、情報の重要性に関する感性が低い。新聞も大臣も、情報の重要性と、その管理に関して必ずしも十分に認識していないと思える。さらに、企業側としても情報の重要性を真に認識しているとは思えない。
少し別の角度から見れば、企業業績に関する情報がいろいろなルートから漏れる一因は、企業側の決算情報の発表が遅いことにある。どのような企業であっても一ヶ月もあれば決算はまとまるはずである。そうでない会社があれば、上場会社失格だろう。現実は、数値がまとまった後、社内手続きに相当の時間を要しており、外部への正式の公表が遅れてしまっている。これらの手続きの間に、決算情報を得た内部者は、その情報を概算値だとして丸めて外部に提供できるし、実際に提供してしまっている。
何か「おかしくない?」である。
2009/11/14