円が急速に買われている。国内資金の「縮み」、「縮小均衡」の傾向が強く表れていると思うが、この現状に関して注目すべきなのが12/3に公表される7-9月期の法人企業統計調査である。
『株式・債券投資の実証的分析』で取り上げたのが、売上高に対する付加価値の率である。ここでの付加価値としては「営業利益、人件費、減価償却費」の合計を用いている。この率が1995年以降、傾向的に低下を続けている。11/21「デフレの本質1」、11/24「デフレの本質2」で書いたように、日本企業(そのコアである製造業)の収益力が急速に低下していることを意味する。リーマンショック後の景気の底は今年1-3期だったが、4-6月もこの付加価値額と売上高との比率(付加価値率)が低下を続けている。4-6月の企業収益の回復は、実のところみせかけに過ぎなかったわけだ。
ということで、7-9月期に付加価値率が上昇に転じるのかどうか、上昇に転じたとしてどの水準にまで回復するのかに、個人的に注目している。とはいえ7-9月期は、ある意味、はるか昔かもしれない。というのも、10-12月期に入ってドル/円で見て急速な円高が進んでいるから、企業にとっての収益環境が悪化している。
もう少し言えば、競争力の低下した日本企業にとって、円高は致命的かもしれない。世界的な競争の中で生き残りを図るのなら、海外に生産拠点の中心を移す「賭け」が必要なのだろう。そこまでの決断が多くのサラリーマン経営者に可能なのかどうか。いよいよ、日本企業全体にとっての正念場である。
2009/11/27