川北英隆のブログ

借金大国の成長

政府が成長戦略を描くという。この戦略の上で重要なのは、人材、資本、技術の資源をいかにフル活用するかだ。これらに関してメモ書き程度のものを示しておく。
人材に関しては、基本は不足している。人口の減少は人材の絶対数の減少を意味しているからである。しかし、大学卒業生の就職率が悪い。というのは、要するに世の中に必要な人材が供給されていないからだ。いかにして適材適所に人材を配置するのか。この方策は、子供のすべてを大学に進学させることではないだろう。親が言うので仕方ないから大学に来ている、それも文系の学部で授業を受けているという学生が多すぎる。これでは適材適所はおぼつかない。大学というか教育の抜本的改革が急務だろう。
資本に関して、国債に日本経済の貯蓄が吸収されるのでは意味がない。それもインフラ投資ではなく、人件費や消耗品に消えていく。将来の成長のための設備投資が行われないことに等しい。かつての日本に高度成長が実現したのは、一つは軍事費への支出が少なく、多くの資本を設備に投入できたからである。大国のアメリカが軍事費を肩代わりしてくれたからだとも言い換えられる。今後は、軍事費にも疑問符が付くかもしれないが、これは横に置いておこう。何よりも重要なのは、国民の貴重な貯蓄が国債ではなく、より有効に使われるのかどうかだ。そのための道筋を政府はきっちりと示し、みずから実行しなければならない。
技術に関して、未来の宝が大企業に眠ってしまっているらしい。大企業には技術を果敢に活用する経営力が欠乏している。技術を活用すれば、ともすれば既存の事業の基盤が損なわれるからだろう。企業のガバナンスそのものからの改革が必要だが、民間企業自身の改革であるだけに、道筋がほとんど見えない。
以上のように考えると、人材、資本、技術のフル活用には日本社会全体の抜本的改造が不可欠のように思えてくる。戦争がない時代だとすれば、日本社会全体が貧乏になるような経済的ショックか、大きな天災が必要なのだろうか。それよりもじり貧の方がましなのか。

2009/12/27


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