株式持ち合いに関してもう一つ、アホな内容の記事を見つけた。記事が間違っているとかではなく、内容が笑えるのである。
1/20の日経新聞朝刊によると「企業が持ち合い株式を信託し、信託受益権を受け取るが、その受益権を関連証券会社にさらに売却することで株価変動リスクを証券会社に移転し、一方で元々の持ち合い株式の議決権(議決権行使の指示権)は企業側に残るようにする」スキームだそうだ。実は8/26にも同様のスキームに関する記事がある。それによると信託期間は1年から5年程度を想定しているという。
スキームの内容について、記事以上の情報はない。とはいえ、要するに、株式持ち合いの最大の目的である議決権を維持したまま、価格変動(価格下落)リスクを避けることに趣旨があるようだ。
そこまでして株式持ち合いを続けたいのかというのが笑える理由の一つであり、それを商売に利用した信託銀行と証券会社の根性も笑えるのである。
当然、このスキームはタダではない。証券会社はリスクをヘッジするだろうから、そのヘッジコストに利益を上乗せして企業に請求する。信託手数料も必要になる。コストの合計は価格下落リスク以上のものになってしまう(少し説明しておくと、理論上はリスクの量に等しいヘッジコストがかかることに加え、その他のコストが必要だから)。このコストに見合った成果が株式持ち合いによって得られるのかどうかである。
しかも、値下がりするかもしれないと心配する相手先って、どんな企業なのかも問わなければならない。日本航空のような企業なのかと疑いたくなる。立派な企業との取引関係や提携関係を強化する目的で株式を持ち合うのなら、堂々と保有すればいいだけだ。たまたま経済環境が悪く、値下がり損が出ても、株主に対してきちんと説明できるだろう。
信託に出してなんて手の込んだことで株式を持ち合うのは、どこかにやましさがあるとしか思えない。この意味で偽装である。
2010/01/21