川北英隆のブログ

10-12月期GDPと新聞報道

本日、2009年10-12月期のGDP速報値が公表された。新聞の見出しは実質ベースで年率4.6%成長と踊っていたが、割り引いて考える必要がありそうだ。
10-12月期のGDPで一番明るかったのは、名目GDPが7四半期ぶり、つまり2008年1-3月期以来はじめてプラス成長(前期比0.2%成長)に転じたことだ。
一方、実質GDPは年率4.6%成長(前期比1.1%成長)だったが、7-9月期がほとんどゼロ成長にまで下方修正されたため、均すと大した成長率にはなっていない。とはいえ、1.1%成長の内訳をみると、国内需要の寄与分は0.6%、残り0.5%が海外需要の寄与分となっている。これまで海外需要だけでプラスになっていたことと比較すれば、やはり明るいのである。しかも、民間設備投資に底打ち感が出てきた。水準はすこぶる低いながらも、設備投資も底を打ったということは、少しずつ国内に明るさが戻ってきたということになる。
言い換えれば、年率4.6%成長で騒ぐのは嘘っぽいが、明るい材料が積み重なってきているのも事実である。この点を強調すべきだったと思うのだが、新聞の見出しはどうなっていることやら。
客観的事実だけをもう少し指摘しておくと、実質GDPの水準は依然として低い。2008年1-3月期のピークから2009年1-3月期のボトムまでの実質GDPの落ち込み額を100とすれば、10-12月期までに27を取り戻しただけである。山登りにたとえると、回復の道程はまだ3合目付近である。
また、名目ベースでの0.2%成長のうち、国内需要の寄与分は-0.3%、一方、海外需要の寄与分は0.5%である。内訳をみると、実質ベースと同様、企業設備投資は名目でもプラスに転じている。一方、個人消費はわずかではあるがマイナスである。消費者物価の低下が影響していることになる。
先行きについて、12月の貿易統計で指摘したように、欧米向けの輸出の回復速度がのろい。中国向けとのアンバランスが大きいともいえる。このアンバランスが解消されないと、日本経済の不安定さも解消しないだろう。

2010/02/15


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