今日(2/6)の日経の朝刊に「GDP 季節調整を変更」との見出しがあった。輸出と輸入の系列が対象だという。1/28のブログでも指摘したように、通常の季節調整では歪みが生じるからだ。
季節調整とは「季節的な変動」を除去する統計的な手法である。たとえば、カズノコが売れるのは12月である。11月と12月を単純に比較して、「12月は前月よりもカズノコがたくさん売れたことからすると、カズノコ好きの家庭が増えた」なんてことは誰も言わないだろう。カズノコだから季節性は誰の目にも明らかだが、他の商品ではそうはいかない。また、季節性を除去する一番簡単な方法は前年同月と比べることだが、それだと「1年前に比べて品物が売れている、売れていない」の判断は可能なものの、前月や前々月に比べてどうかは分からないから、景気に対する評価が遅れてしまう(前年同月比の数字を並べてみるとある程度推測できるが、少し大雑把な評価しかできない)。
そこで、季節性を統計的に除去し、前月や前々月と比べることが求められる。カズノコの場合であれば、例年の統計数値から、普通の12月は他の月と比べて何倍カズノコが売れるのかを計算しておいて、そのカズノコの正月準備効果を割り引いた数字を作り、「今年の12月のカズノコの本当の売れ行き」を数字として示す方法である。
問題は、季節調整が万能ではないことだ。2008年9月のリーマンショックにより、翌10月から09年年初にかけて、輸出入や生産が急速に減少した。その減少が非常に大きかったため、単純に季節調整すると、リーマンショックによる減少が「季節性」とみなされてしまう。このため、たとえば「2009年10-12月のGDPがほぼ横ばい」であったとしても、季節調整すると、「例年10-12月のGDPは低下するもの」とみなされてしまうので、季節調整後のGDPは「上昇した」となってしまう。日経の記事は、この季節調整の調整が行われるとのことである。
具体的にどうするのかは記事からだけではわからない。一番簡単な方法は「リーマンショック・ダミー」のような特別の変数を加えることである。リーマンショックの影響がある期間を「1」とし、他の期間を「0」とする変数である。
いずれにせよ、リーマンショックの統計的な影響がまともに議論されるのは、望ましいことだ。
2010/02/06