京大の年金シンポジウムで公的年金の資産運用に関してパネラーに質問した。厚生労働省と総務省が対立していることを受けたものだ。パネル全体の流れとは異なり、穏当な答えが多かった。私自身の思いとは異なっていた。
パネルのメインのテーマは企業年金を巡るものだった。ニュアンスの差はあったが、企業年金の役割が縮小方向に向かって変化していることに関して、大きな意見対立はなかったと思う。
一方、公的年金、その大部分を占めるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産運用に関してパネルのアンカーとしての特権から質問すると、現在の国債中心の運用に関して大きな異論が出なかった。まあメインのテーマでなかったからかもしれないが。もう少し正確には、公的年金の資産運用はリスク抑制的にすべきだ、だから国債だとの意見もあったし、これがパネラーの平均的な意見に近かっただろう。また、厚生労働省の意見にも近い。
思うに、国債による資産運用は日本航空(JAL)の年金の状態に近いのではないのか。つまり、潜在的に大きなリスクがある。少し専門的になるが、GPIFのバランスシートを簡略化すれば、「資産=国債、負債=年金保険料積立金」である。一方、国債を発行している政府のバランスシートは「資産=将来の租税収入=徴税権、負債=国債」である。GPIFは政府機関であるから、GPIFが国債のすべてを購入できていないことに注意しながら政府のバランスシートと連結すれば、「政府・連結後」のバランスシートは「資産=徴税権、負債=年金保険料積立金+国債」となる。つまり、GPIFの資産である国債と政府の負債である国債とが相殺され、国民が支払った年金保険料は見返りの資産がない「政府に対する信用貸し」となってしまう。
政府がこければ、これまで支払った保険料が露と消えてしまうわけだ。まあ、バランスシートだ、連結だと説明しなくても、直感的にわかることだが。
2010/03/13