川北英隆のブログ

マグロを巡る暇つぶし

ワシントン条約締結国会議でマグロ論議が戦わされ、策謀が繰り広げられた末に「大西洋・地中海産クロマグロの禁輸案」が否決される運びになったという。でも、双方の議論に自分たちの都合が見え隠れしている。
まず、欧米がマグロ漁に反対し、その前にクジラ漁に嫌悪感を示すのは不思議な気がする。
好きな小説の1つがメルヴィルの「白鯨」である。この「白鯨」が象徴するように、昔、欧米はクジラを捕るために大航海を試みてきた。その歴史をどうするのだと思う。多分、クジラは、油や香(龍涎香)を採取するためのものでしかなく、肉を食べるものではなかったからだろう。油や香の代替物が豊富になり、クジラが「どうでもよくなった」からクジラ漁に全面的に反対なのだろう。
今回のマグロ論議も国内での消費はOKであり、輸出入を禁じるだけである。だから、そんなにばかすかマグロを食べない欧米にとって、ワシントン条約でクロマグロの輸出入を禁じたところで大した影響はない。
逆に見れば、今の日本人はマグロをあり難く思い過ぎているのではないだろうか。マグロよりも美味い魚は沢山ある。たとえマグロがうまいとしても、他の魚も食べたいものだ。トロがどうしたのだとも思う。タコとマグロとシャケだけが魚ではあるまいにということだ。
そもそもマグロは大量処理しやすく、商業ベースに乗りやすいのだろう。家庭にとっても魚の骨の面倒な処理が不要だし。要するに、日本の食文化から多様性が消滅しつつあるから、マグロが異様に珍重されるだけだと思える。それに、今回の議論の対象はクロマグロで、めったに食卓に登場しないし。
マグロよりももっと大事な国際論議の対象が山ほどあるのに暇なことだというのが、偽らざる感想である。

2010/03/20


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