先日(4/15)に東証の悪口めいたことを書いたが、その続きである。もっとも、東証だけを非難するつもりはない。
かつて、証券取引所が上場企業に求めている決算短信に、どのような情報を盛り込むべきか、研究会が開催された。簡素化すべきものは簡素化し、充実させるものは充実させる。そのうえで、決算短信の公表日を早くしようというのが研究会の目的だった。
各委員からいろいろ意見が出たが、研究会の委員としての私は、当時は一個人投資家になったばかりであり、個人投資家の立場からすると投資判断に必要な情報の入手がきわめて不便だと感じていた。そこで、その不便さを少しでも解消したいと考え、発言した。
要望の1つが、決算末時点での時価総額を決算短信に記載してほしいというものだった。この重要な情報を得るためのハードルは、個人にとって極めて高い。期末の株価は比較的簡単に入手できるが、発行済み株式数の入手が面倒である。権利落ちがあったりすると、さらに複雑になる。
一方、時価総額の情報は決算情報とは直接関係ないものの、無関係ではない。また、経営者は、自分たちが経営している企業を投資家がいかに評価しているのか、常に注目しているはずだ。そこで、経営に対する投資家の評価を確認する意味でも、決算期末の時価総額を決算短信に記載すべきだと提案してみた。そうしたところ、意外にも評判が悪かった。とくに企業を代表して出席している委員は反対だった。それでも、強く提案したこともあり、最後まで「時価総額の記載」は委員会の案として残っていた。
ところが、最後の会合だったと思うが、大学の用事で欠席したところ、委員会の報告書最終案から「時価総額の記載」が抹消されてしまった。委員会の報告を読み、抹消の事実を知った。「何たるちあ」というわけで、少し文句を言ったが、後の祭りだった。
時価総額の計算くらい企業にとっては瞬時のはずだし、経営情報として重要である。そんな簡単な情報さえ記載しようとしない日本企業の体質って何や、というわけだ。また、その記載案の抹消を許した証券取引所って、物事の本質を理解していないのではないかと思ってしまった。
以上が先日の続きである。今、同じことを議論すれば変化が見られるだろうか。これが今の最大関心事項の1つである。
2010/04/21