自動車産業のみならず、これまで海外と無縁に近かった業界、たとえば鉄道や通信も国際化しようとしている。いずれも、国内経済の成長力の限界を痛感した結果である。
しかし、この動きは大企業や、一部の力のある中堅・中小企業に限定される。大企業の場合、成長しなければ衰退し、いずれどこかの企業に飲み込まれる可能性が大きい。このため、強迫観念に駆られて国際化する場合もあるだろう。国際化の結果、世界の強豪と激しい競争を戦わなければならない。販売や生産は海外に重点が移り、日本国内に残るのは最先端の開発研究部門や生産部門だけとなるだろう。
一方、多くの中小企業や零細企業は国内にとどまったままだろう。個人企業の場合、そこそこ食えればいい、仕事に満足できればいいという感覚も強いだろうから、すべての個人企業が海外にあえて展開する必然性は到底ない。とはいえ、現在のままで生き残れる保証はどこにもない。独自の何かを持っていなければならないだろう。たとえば技術(最先端なものである必要はなく、伝統的なものでも十分)であり、販売網(たとえば地域的なネットワーク)である。
また、介護に象徴的なように、国内では新たなサービスが必要とされる。そのようなサービスをいかに供給するのかである。必要は発明の母、どのような形になるのかは不明だが、活発に供給されることが予想される。
以上の推論から日本の産業構造の近未来の姿がある程度導ける。
1つは、大企業と個人を含めた中小企業の経営が今後ますます分離し、乖離して、極論すれば二極化することである。もう1つはサービス分野の進化である。サービスばかりは、それだけでは輸入できない。
問題は、このような産業構造における雇用がどのように変化するのかである。真剣に考えておかなければならない。
2010/05/05