6/3に公表された1-3月期の法人企業統計によると、企業業績はゆっくりと回復しているようだ。日本経済新聞の記事にある「経常利益も2四半期連続で大幅に増え」との表現は少しオーバーだ。
大企業(資本金10億円以上の企業)の売上高と営業利益を見ておきたい。大企業に注目するのは、企業業績の回復は海外展開力のある大企業からスタートするためである。営業利益に注目するのは、営業段階では利益に関する特殊要因があまり生じないから、企業の実力を評価できるためである。
この売上高と営業利益について、2年前の1-3月期と比較した。1年前との比較、すなわち前年比では、貿易統計と同様、その前年が大きく沈んでいるために評価が困難だからである。
さて、この比較によると、製造業は、売上高が-18.0%(10-12月期-19.6%)、経常利益が-43.5%(10-12月期-52.9%)だった。また、非製造業は、売上高が-15.2%(10-12月期-12.9%)、経常利益が-29.9%(10-12月期-20.8%)だった。
つまり、製造業は回復を続けているが、その速度はゆっくりである。一方、非製造業の回復は少し後退している。1-3月期は輸出主導の回復であり、国内には海外発の回復が十分に波及していないことを裏付けている。
もう一点、これまで注目してきた売上高付加価値率(付加価値は営業利益、人件費、減価償却費の合計)だが、製造業は17.9%と10-12月期の18.5%から低下している。もっとも、1-3月期は季節的に売上高付加価値率が低下する。この季節性を除去するとほぼ横ばい圏にあると考えていい。もっとも、サブプライムローンショック以前の水準は19%程度だったから、収益力が十分に回復したとはまだまだいえない。
さらに、売上高の前々年比の数値にも表現されているように、売上高の回復が十分ではないため、減価償却費負担や人件費負担が重い。このため、売上高営業利益率は3.1%にとどまっている。サブプライムローンショック以前の半分程度である。同じことだが、総資産営業利益率は2.8%であり、きわめて低水準にある。
やはり、売上高が増加しないことには低利益率からの脱却は難しい。
2010/06/06