株式市場のホットな話題は、東証マザーズに上場していた半導体製造装置メーカー、エフオーアイが上場後の最短記録を更新し、上場廃止となることだ。
わずか7ヵ月の命、それも上場後、一回も年度決算を行わなかった。上場廃止になったのは大胆な粉飾決算のためである。結局、エフオーアイは破産した。
虚偽記載が発覚する前の開示情報によって売上高の推移を示しておくと、08年3月期95億円、09年3月期119億円、10年3月期(見通し)130億円となっている。上場申請は09年3月期の決算に基づく。粉飾の方法は、架空売上高の計上である。09年3月期については、海外との取引を装い、売上高を100億円程度水増ししていたとされる。「とすると、ほとんど売り上げがないやん」という計算になる。
このような粉飾まみれの状態を見破れなかったのは、上場審査プロセスのミスだと考えていい。
というのも、08年9月のリーマンショック以降、他の半導体製造装置メーカーでまともな売上高を計上できていたメーカーがないからだ。エフオーアイがどのような特殊な技術を持っていたのかどうかは知らない。しかし、エフオーアイが半導体製造に必要な装置のすべてを一貫して製造していたわけでないから(回路のエッチング装置が主力であるから)、「リーマンショック以降、たとえ設備投資を継続していた半導体メーカーがあったとしても、特定の装置だけをしこたま買うはずがない」と考えるのが常識である。それなのに、上場審査プロセスを担当した公認会計士、幹事証券会社、東証がころころとだまされたことになる。
審査でどのような質問をしたのか。どのような巧妙な説明を受けたのか。常識的に考えなかったのか。このあたりの真相を知りたいものだ。
なお、エフオーアイの09年3月期の貸借対照表では、資産総額292億円に対して売掛金229億円という異常な状態にあったわけだが、「設備投資を継続していた絶好調のはずの半導体メーカー」がそんなに金払いが悪かったのか。これも他の半導体製造装置メーカーとの比較を行うべきではなかったのかと思うが、そもそもは、この売掛金を調査する以前の常識の問題だった。
2010/06/11