川北英隆のブログ

アジア主導の輸出回復は不変

財務省から5月の輸出入動向が公表された。この数ヵ月、アジア主導による回復基調が強まっているようだ。
2008年秋から09年春にかけて貿易が大混乱したため、公表された数値の評価が難しくなっている。いろいろ分析方法を駆使して評価したところ、輸出について、昨年3月以降、年末にかけて回復した後、数ヵ月もたついていたものの、今年春以降は再び回復基調を明確にしているようだ。
これまで用いていた2年前の同月との比較に問題が生じてきたため(つまり、2008年の春以降との比較が望ましいのかどうか、リーマンショックの月が近づくにつれて怪しくなってきたので)、3ヵ月の移動平均で判断することを試みた。これなら、3、6、9、12月という輸出の盛り上がる月が計算に必ず入る。季節要因の調整がある程度行われる。
この数字を追うと、今年の初めに輸出の回復のもたつきが、欧米向け、アジア向けに共通して見られた。その後、アジア向けは過去のピーク水準とほぼ並ぶまでに回復している。ちなみに、中国向けの回復に関して、2年前の同月との比較よりも「少しピークに並ぶスピードが遅い」ように見えるものの、これまでの分析と大きな差異がない。
一方、回復の鈍かった欧州向けが4月、5月と回復スピードを速めている。これに対し、アメリカ向けの回復がストップしている。ギリシャ危機の影響を本格的に受ける6月以降も、欧州向けの回復が続くのかどうか、引き続き注目点である。また、最近のアメリカの経済指標のもたつきと、貿易統計においてアメリカ向け輸出の回復が停滞していることとは符合する。欧米経済は深手を負ったわけだから、回復が一筋縄でいかないのは当然だろう。政治や経営者の手腕からして、日本のように経済の沈滞が20年も30年もかかるとは思わないが、手放しでの楽観も依然として禁物である。

2010/06/24


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