川北英隆のブログ

就職活動についての議論

先週の金曜日、『就活革命』(NHK出版)の著者、辻太一朗氏と議論する機会があった。文系の就職のあり方を変えたいというのが本書の目的だそうだ。
現状を前提として学生、企業、大学がそれぞれ最適な行動をしているから、文系の学生の質が低下し、企業は学生に満足せず、大学もきちんとした教育ができていないというのが辻氏の主張である。
これから就活しようという学生のために、辻氏が述べた「企業側の主張」をまとめておこう。それによれば、企業にとって満足できる学生が少ないから、早くから採用活動を開始し、多くの学生に会って、選別する必要があるのだそうだ。
企業が求めているのは、正解のない現実の世界で問題を設定でき、その問題の解決に接近できる学生、すなわち問題意識の高い学生ということになる。また、少なくとも大学時代にきちんと勉強してきた学生ということになるが、こちらの方は企業側が早くから採用活動を開始したのでは無理難題である。
大学側からすると、問題意識の高い学生を育てるには、まず高校までの暗記を主とした教育から決別させなければならない。そのうえで、双方向の教育に重点を置く必要があるが、それには多大な資源が必要になる。そのための予算が不足している。また、現在の教育システムは「落ちこぼれをなくすこと」に重点が置かれているから、どうしても教育が甘くなる。言い換えると、必ず何割か落ちる講義を行い、学生に勉強を強要させればいいのだろうが、これを徹底することは許されていない。
アメリカの学生と比べて、さらには中国や韓国の学生と比べて、卒業時の日本の文系の学生のレベルは明らかに低いとの評価が一般化しつつある。これは、教育システムと、その教育システムを前提とした企業の採用活動と、学生の対応のそれぞれに責任の一端があるのだろうが、そもそもは大人である大学と企業の問題であり、学生に責任を押し付けるのは筋違いである。
就職活動については稿を改めて述べてみたい。

2010/06/27


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