その効果がどこまであるのかはともかく、事実として公的年金には100兆円を超える資金が積み立てられている。これらは将来の年金支給にあてがわれる。その資金運用をどうすればいいのか。
1つは、運用対象の問題である。国債にすべきなのか、それ以外にすべきなのか。
毎年発生する政府財政の赤字を埋め合わせるために発行される国債を対象とした運用では、年金資金を積み立てる意味がない。このことは以前(3/13)に書いたとおりである。年金という政府が将来にかかえる債務が、国債という勘定に振り替わるにすぎない。そんな年金制度のために、国債の発行、年金保険料の徴収、年金積立金の管理と運用が必要となり、そのためのコストを払わなければならない。公的年金には所得の再配分機能があるのだろうが、その機能を達成するための手段として、公的年金制度は唯一無二のものではない。他の手段を採用すればいい。
公的年金の積立金が国民にとって意味を有するための必要条件とは、国民財産の分散効果を狙った運用が行われることである。政府負債以外のものであれば、分散効果が得られる。
もう1つは、市場を模倣することすなわちインデックス運用から離れることである。市場価格は常に間違うものである。日本のバブルと崩壊、90年代末のアジア通貨危機、新世紀前後のITバブルと崩壊、07年に表面化したサブプライムローン問題を思い出せばいい。大きなミスプライシングが何度も生じている。それでも市場価格が常に効率的だと信じるのだろうか。細かな価格の波まで忠実に模倣する値打ちがあるのだろうか。
国民のため、長期的な効率性を追求する公的年金だからこそ可能な投資スタイルというものがあるはずだ。その検討を放棄し、インデックス運用に依拠するのは、国民の期待に反している。
2010/07/24