公的年金に関して、最後に、それが(今日から受給できるようになったので「これが」が日本語として正しいかもしれないが)リスク資産であると指摘しておきたい。
つまり、縮減され打ち切られても不思議ではない、ひょっとすれば(財政赤字という)砂漠に(保険料という)水を撒くようなものだ、少なくともそんな覚悟のいる資産だと、国民のほとんどが強く意識している。だから、公的年金以外のリスク資産を保有する動機に乏しくなる。
現在、個人金融資産はローンを差し引いた純額ベースで1000兆円程度、ローンを差し引く前で1500兆円である。一方、公的年金は、年金制度が縮減される前には「最大800兆円程度」の価値(政府としての負債額)があったとされる(財務省資料に基づく)。年金制度が縮減されて以降、その価値の算定結果が公表されていないものの、2割程度の価値の減少として推定すれば、600兆円程度の価値が依然としてあることになる。つまり、個人金融資産と比較しても非常に大きい。
それだけ価値のある公的年金なのだが、残念ながら、絵に描いた餅になるかもしれない、馬に人参かもしれない(ウマさん堪忍)、そんなリスクのある資産でもある。だから、個人が自分で保有する1000兆円の資産を元手に株式投資したり、海外に振り向けたり、ましてやベンチャーに投資したりなんて思いもよらないことになる。
つまり、国が頼りないから、自分自身がしっかりしなくてはとの意識が強い。その結果が大量の銀行預金である。しかし、その銀行の資産の多くが国債に振り向けられている。結局は頼りない国に流れているのだが。この事実をいかに評価するのか、そこまで知っている国民の割合は多くないということだろうか。
いずれにせよ、個人金融資産を株式や投資信託へ振り向けてもらい、日本経済に活力をもたらそうと試みるのであれば、まずは公的年金制度のリスクを排除しなければならない。この方法は、謝罪であり、美辞麗句を抜きにした意味で身の丈に合った公的年金制度の確立であり、過去の精算である。
2010/07/27