日銀総裁の白川さんから聞いたことがあるのが、「大学があまりにも貧乏なので、日銀に戻って統計を整備し、使いやすくした」との趣旨のことである。
知っておられる方も多いだろうが、白川さんは一時、京都大学公共政策大学院で教えられていた。その時に、大学の統計情報の環境があまりにもお粗末だと体験されたのだろう。要するに、というか少なくとも京都大学には、「紙と鉛筆」さえあれば金融経済の研究が可能だとの確信が根づいているようだ。だから、新しい統計の整備にはわずかな予算しか来ない。実証分析や実証に基づく教育なんて不可能に近い。もちろん、科学研究費のような入札に応募して研究費を獲得すれば、新しい統計データを買える。しかし、その研究が終われば元の木阿弥に近い。
ということで、大学での実証分析の基本は、フリーにダウンロードできるデータということになる。少し前に東証の悪口を書いたが、東証のデータも頻繁に使わせてもらっている。できれば「もう少しフリーの範囲を広げてほしい」とお願いした次第である。
この点、白川さんが言うだけあって、日銀からフリーに落とせるデータは豊富である。少し目を離すと、さらに少し充実していたりする。まだアクセスしたことがないという方は、一度試しに入ってみるとどうだろうか。
可能かどうかは不明だが、できれば政府のデータもまとめて落とせるようにして欲しいものである。というのも、政府のデータは、そのアップの仕方が省庁によってまちまちで、扱いにくいからだ。
かつて、日銀も東証も、冊子で統計情報を提供していた。長期間のデータが一目でわかり、非常に重宝だった。それらのデータを集めて公表するのに大変なコストがかかっていたと思うが。今でもその冊子を宝物として研究室に保管している。理想を言えば、それと同様のデータ環境をネット上で整えてもらいたい。
2010/07/06