日本振興銀行の木村剛が捕まった。ある意味で必然である。
東京都が新設した銀行といい、日本振興銀行といい、要するに「既存の銀行が貸し渋っているから中小企業が苦しむ」という想定に基づいて新たに設立された銀行である。客観的にみて、そういう中小企業もある(あった)とは思うが、多くの中小企業の問題は銀行の融資姿勢にあったわけではない。政府の経済政策の無策という責任を転嫁することに本来の意図があった。魔女狩りと同じである。銀行を猫と同列に扱ったわけだ。なんて、猫に失礼かな。
木村剛と一回だけ(ひょっとして数回かもしれないが)、政府というか竹中某主催の会合に同席したことがあった。そんな類の会合では、時々、年寄りの功成り名を成し遂げた爺さんが延々喋る。見苦しいといつも思うのだが、その時は若い木村剛が他の委員の発言時間をすべて消化する勢いで延々喋った。「アホちゃうか」と思ったのだが、後で、そんな木村を竹中が重用したと知り、「そうか、権力志向のスリスリ、ゴロニャンだったのか」と思った次第である。またまた、猫に謝らないといけないが。
別のある日、5年くらい前だったと思うが、某記者から電話があり、東京に出かけたついでに取材に応じるため、経済産業省の隣のビルを訪れた。入ってびっくり、木村剛が経営するメディアだった。彼自身の著書がいくつも飾られていた。
日本振興銀行は2000年前後に生じた日本の金融システム危機の徒花だったと思う。今回の逮捕は、その仇花が咲き終わったということだろう。
ついでに書いておくが、比べること自体が村上氏に失礼ながら、木村剛は村上ファンドよりはるかに評価が劣るだろう。村上ファンドは日本の株式市場に活を入れたというか、当初の目的は活を入れるためにあったのだから、評価できる。他方、銀行が掃いて捨てるほどあるにもかかわらず、新たな銀行を作ろうなんて、素人ならともかく、日銀出身の木村剛が本気で思ったとは到底思えない。そんな誘いにやすやすと乗った政府もいただけないが。
2010/07/14