川北英隆のブログ

公的年金の議決権行使

ある雑誌向けの記事を書くため、株主総会での議決権行使の状況を軽く調べた。対象は企業年金連合会と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)である。
この年齢になると「年金積立金管理運用独立行政法人」なんて、平凡な単語が長々と続く固有名詞はなかなか記憶できない。合併で長ったらしくなった銀行や証券会社や保険会社の名前と一緒である。何とかしてほしいものだ。なんて、いつも思う。
それはともかく、本題だが、企業年金連合会は議決権行使の旗手であり、2002年度の議決権行使から公表を開始している。GPIFは世界最大級の運用機関である。両者とも公的機関でもあるから、議決権行使に与える影響も大きい。
調べると、企業年金連合会の場合、役員関係の会社提案に対して高い比率で反対・棄権をしている。今年6月の株主総会では、取締役選任33.0%、退職慰労金支給25.8%、役員報酬額改定11.2%、ストックオプション付与14.1%となっている。なお、全体での反対・棄権の比率は18.1%となっており、昨年の12.4%よりも上昇した。
一方、剰余金処分や定款一部変更に対する反対比率は少ない。最近はこの傾向が強いようだ。企業が提示する剰余金処分案(株主からすると配当案)が正しいのかどうかの判断は難しい。アメリカでは無配を堂々と宣言している著名企業さえあるのだから。ちなみに、かつての企業年金連合会はかなりの比率で剰余金処分に反対していた。この過去と比較すると、穏健かつ妥当なスタンスになったと考えられる。会社側が企業年金連合会詣でをしている効果もあるかもしれない。
これに対し、GPIFはどうかというと、企業年金連合会よりもおとなしいようだ。GPIFの場合、2009年度に開催された株主総会での議決権行使しか公表されていない(かつ、外部機関に運用委託している場合である)ので、同じベースで企業年金連合会と比べておくと、GPIFの反対・棄権の比率は9.0%、企業年金連合会は18.5%である。約半分といったところだ。内容を見ると、GPIFの場合、取締役選任に対する反対・棄権比率が8.5%(連合会は44.9%)ときわめて低い。
旗手としての企業年金連合会の顔色をうかがって運用機関が議決権を行使しているためだろうか。それとも、企業年金連合会が議決権行使基準を明確にしているためだろうか。そこのところを知りたいものだ。

2010/08/09


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