川北英隆のブログ

就職活動は4年生の時に

大手商社が経団連に「(大学生の)採用活動を遅らせるよう」提案し、それを受けて経団連は「新卒採用選考の開始時期を、4年生の夏以降に徹底するよう申し合わせる方針を明らかにした」と報じられた。
まだ正式に決定したわけではなく、「早ければ10月中旬・・・正式決定」し、「経団連が加盟企業向けに策定している新卒採用のための倫理憲章にも盛り込み順守を呼びかける」そうだ。以上は産経新聞からの引用である。
もっとも、「平成24年入社の新卒から採用試験の時期を遅らせ」とも書いてある。これをそのまま読めば、平成24年とは再来年であるから、現在の3年生が入社する年である。しかし、現在の3年生は今年の夏休み前後からすでに就職活動を始めている。混乱が生じるかもしれないので、この点は何らかの対応が必要かもしれない。また、これまでは外資系の企業が一番早く活動を開始していたが、果たして経団連に加入しているのかどうか、加入していたとして自粛するのかどうか。この点はしっかりとウォッチする必要がある。
以前にも書いたが、3年生の夏頃から就職活動をされたのではゼミ活動がまともにできない。修士の学生は入学したその直後から就職活動を始めることになる。きわめて変な状態になっていたわけだ。
まあ、「大学や大学院の教育なんて大したことをやっていない」と評価されていたのかもしれない。そうであるのなら、「高卒時点ですべての学生を雇えや」という反論が成り立つ。多少なりとも大学に期待しているから、大卒や院卒を雇うのだろう。ということは、企業としてもちゃんと大学で教育してもらうにかぎるはずだ。とくにゼミは学生の自主的思考を伸ばす教育だから、非常に重要である。商社の今回の提案はきわめて正論であるし、実際のところ学生の能力不足に困っていたのだろう。
これも以前に書いたと思うが、早期の就職活動の自粛は本来、文部科学省が主張すべき事柄である。大学の教育の質を高めるための基礎条件だからである。企業側からの提案とは、ある意味で異例である。
大学としては、これで教育のための基礎条件が回復するわけだから、「教育の質が低いのは我々のせいではない」と就活を言い訳に使えなくなったことになり、本気度を一層上げなければならない。

2010/09/26


トップへ戻る