今まで分析してきたのが経済全体か個別企業だったので、中小企業については手薄だった。最近、さるCRD協会の依頼で中小企業をからめた原稿を書いた。その過程であまり想定していなかった事実を発見した。
データを元に付加価値生産額を計算してみた。ここでの付加価値生産額とは営業利益、人件費、減価償却費を合計したものである。
そうすると、日本の企業が生み出す付加価値のうち、製造業のウェイトが30%ちょっとでしかなく、非製造業のウェイトが圧倒的に大きくなっていた。これは常識的な結果だった。
では、企業規模別にみて、中小企業(資本金1億円未満)がどうなのかというと、50%近い。一方、大企業(資本金10億円以上)が40%を切っている。残りの20%弱が中堅企業(資本金1億円以上、10億円未満)である。付加価値の要素である営業利益では大企業の存在感が圧倒的なので、人件費を含めた付加価値生産額でも中小企業のウェイトは大企業よりも小さいだろうと、計算する前に予想していたのだが。
つまり、中小企業は日本経済の活動全体にとって重要な役割を果たしているのだが、その大部分(80%)は人件費の支払いに充てられている。だから、企業の顔である利益面で、中小企業は目立たない。しかし、個人の生活にとって中小企業の存在感はきわめて大きい。
このことをどのように考えればいいのか。日本企業の海外進出の視点から、大学生の就職の視点から、さまざまな論点があろう。この点はもう少し考えてみたい。
2010/10/14