川北英隆のブログ

日本の株価が低迷する理由

昨日(10/27)の日経朝刊の一面は世界の株式市場の回復と日本市場の回復の遅れを対比させていた。トップ記事として、内容に疑問があった。
第一に、見出しと内容がちぐはぐなのである。「時価総額2年ぶり高水準」というのに、グラフはリーマンショックを挟んだものになっているのはいいとして、各国比較の表が相変わらず短期的なもので、「9月以降の各国の株価指数の上昇率」である。それに9月以降って末のことなの、それとも・・・って疑問も生じる。
後者はともかく、リーマンショック後の安値からの上昇率を比較すると日本市場の回復は極端に悪い。ヤフーファイナンスで各国市場の株価グラフを見てみることをお勧めする。日経の記事にあった時価総額の推移でも、30兆ドルを割っていた世界市場の時価総額が52兆ドル(この数字は示されていた)に戻っている。ドル価値が下落しているとはいえ、かなりの回復力だ。この事実を積極的に示さない理由が何かあるのだろうか。
第二に、日本の株価低迷について、その要因を「株安の局面で大型の増資が相次ぐなど、投資家の不信が強まっている」と片付けている。これまた短期的な扱いだ。
日本の株価の低迷の根は深い。そもそも日本企業の競争力の低下が底流にある。企業が国内に居を構える限り、人口減少の中での発展は限定される。日本の大阪化が進むだけだ。
かといって、海外展開したところで(実際、海外への進出はこの5年程度で徐々に進んでいるが)、成功するとは限らない。リスクが高いことを意味する。このため投資家は日本の株式に対して「高いリスクプレミアム」を要求する。海外に資金を投入しても、資金を捨てるだけかもしれないというわけだ。だから、株価としての評価は低くなってしまう。海外展開のスピードが遅すぎたということになる。
その他、株式持ち合い構造が一段と崩れること、「経営者には、企業業績の低迷をわが事として本気で対処する気構えがどうも不足している、他人事のようだ」と投資家が感じていることもある。日本の未来の姿が示されていない不安感もあるだろうし、政治の混迷というかリーダーの不在もある。その後にはじめて、ここに来ての円高、投資家を馬鹿にしたような増資がある。
せめて経済紙のリーダーとしての日経にだけはもっとピリっとしてほしいものだ。

2010/10/28


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