日経の日曜日の朝刊の経済論壇と本日月曜日の経済教室はともに金融政策をとりあげ、インフレターゲットの是非を議論していた。ざっと読んだところ、インフレターゲットを支持する論調だった。
インフレターゲット、すなわち金融政策として目標とするインフレ率を明示する政策は本当に望ましいのだろうか。消費者や企業に期待をいだかせ、その経済活動に影響を与える観点からは効果があると考えられる。
金融に限らず、政策の目指す方向が明らかになることは、各経済主体にとって経済活動の不確定要素を除去してもらう効果があり、将来の予測の難易度が低くなる。もちろん、事前に目標がかかげられたとしても、不測の事態に直面すれば、その目標からの一時離脱もありえよう。しかし、不測の事態が解消すれば、再び当初の目標値(もしくはそれに近いもの)が掲げられるだろうから、長期的な安心感が生まれる。
とはいえ、インフレターゲットに戻ると(他の目標でも同じだが)、その目標の実現性が問われなければならない。何でもいいから目標を掲げるわけにはいかないのである。「アメリカとの戦争に勝つ、勝てるのだ」というターゲットが何の役にも立たなかったどころか、敗戦とその後の大混乱をもたらしたことを思い出せばいい。
現在のインフレターゲット論に欠けているのは、日本が緩やかな価格下落に陥っている原因に関する議論である。それの原因を素通りし、インフレターゲットを導入することの是非と、その場合の目標値が1%だとか2%だとか論じることは馬鹿げている。アメリカ経済、ヨーロッパ経済など、他の国と日本の経済環境の差異を確認したうえで、インフレターゲットの是非を議論すべきである。
この意味で、この日曜日と月曜日の議論はしょぼかった。
2010/11/01