川北英隆のブログ

GDP統計で気になること

本日、昨年10-12月期のGDP統計が発表された。報じられているとおり、1-3月期は足元の貿易や鉱工業生産の動向からすると、プラス成長に戻りそうだ。しかし、気になることがある。
大した意味はないが(というのも、統計の取り方で細かな数字はすぐに変わってしまうから)、まず発表された成長率を確認しておく。年率換算で実質はマイナス1.1%成長、名目はマイナス2.5%成長だった。実質ベースでのマイナス成長は2009年7-9月期以来である。
マイナス成長の主因は、7-9月期の消費が最近になく突出して良かった反動であり、世界経済が足踏みしていたために輸出が冴えなかったことにある。7-9月期の消費が良かったのは、エコカー補助金が9月で打ち切られるというので駆け込み需要があったことと、10月からタバコが値上がりするというので買い溜めがあったからである。この要因を除くと、10-12月期も消費量は少しずつだが増加していて、日本経済の底を支えている。輸出量は、このブログに書いたように12月に増加に転じている。ということで、1-3月期はプラス成長に戻る可能性が高い。
問題は、名目ベース、すなわち金額ベースでのGDPがリーマンショックの落ち込みからなかなか抜け出せていないことにある。内閣府のHPにアップされている名目GDPの実額表をダウンロードするとよく分かるが、名目ベースでの昨年のGDPは一進一退である。結局のところ、リーマンショックによる落ち込み幅の20パーセントしか取り戻せていない。実質ベースでは60%を取り戻せているのに、である。
実質ベースと名目ベースでの違いは、いわゆるデフレの影響である。量は何とか出るのだが、ゼニが伴わないというわけだ。金額ベースで回復しないものだから、懐が温かくなった実感がない。政府にしても、国内経済が名目ベースで成長しないかぎり、税収が増えず、財政問題解決への展望が描けない。
今日の夕刊を見ていないものだから新聞記事の基調は確認できないが、ネットで見るかぎり、1-3月期の見通しを前面に出して記事が構成されているようだ。でも、名目が明るくならないかぎり、本当の意味で明るい未来が来るとは思えないのだが。

2011/02/14


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