川北英隆のブログ

シルバー精工と市場

最近、ショックであり、「やはりそうやったんや」と思ったのがシルバー精工の上場廃止である。かつて、アナリストとして企業訪問したこともあった。
手元に資料がそろっているわけではないのであれこれ確たることは言えないまでも、1979年から5年間の証券アナリスト活動において、シルバー精工は思い出深い企業である。というのも、当時の本社か主力工場かは忘れたが、東京中央線国分寺駅の北口から20分前後、歩いて訪問したことがあった。そのしばらく後に国分寺に住んだから、おおよそのところを覚えている。
当時のシルバー精工はピークを過ぎたとはいえ、まあまあの会社だった。前任者の思い入れがあったと記憶しているが、私がアナリストとして所属していた会社が当時の大株主だった。訪問してヒアリングしたかぎりでは、追加投資すべき企業だとは思えなかったものの、すぐに売却、撤退すべき企業とも思えなかった。だから、そのままにしておいた。ちなみに、同じミシン・編機の企業では、ブラザー工業が業態を転換し、ちゃんとした企業として生き残っている。
そのシルバー精工のことをすっかり忘れていたが、最近、数円の株価で低迷していることを知った。それでも発行済株数は5億株以上あり、時価総額は20億円前後の東証1部上場株式だった。
そのシルバー精工が昨年12月末に不渡りを出し、この1/29に上場廃止となったようだ。シルバー精工は私にとって感慨深いので、最近、年金運用関係者に会う度に話している。
しかし、その反応は、そもそもシルバー精工って何なのってところである。東証1部上場だからTPOIXというインデックスに組み込まれていて、本来はシルバー精工の株価に多少なりとも影響されながら投資の意思決定をしているはず。だから知っていないといけない。そうだから知っていないのは怠慢だ。そう思いつつも、ついシルバー精工とはこういう会社でと説明してしまう。
思うに、インデックスを模倣する投資って、そういういい加減なものなのだろう。どういう会社が組み込まれているのか、今の東証のアホな上場基準では多分にシルバー精工のような老衰企業が入っているのだが、そんなことは一切気にせず、もくもくとインデックスのすぐ後を金魚の糞のように付いて行っている。というか、付いて行くことが金科玉条である。
アジアの経済発展している国なら老衰企業はほとんどないはずだが、日本はどうなのか。多くの企業が老衰にさいなまれているはずだ。そんなことさえ吟味せず、無色透明な投資理論を神棚に祭り、毎日拝み、インデックスの模倣をすればすべて正しい、救われる、そう信じていることに、多くの投資会社の「無駄飯」、「運用委託手数料の無意味さ」を感じてしまう。

2011/02/05


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