表題から「ポートフォリオ」を外し、「資産運用」にした。多くの人に読んでもらいたいからだ。企業が国債リスクを真剣に検討しているそうだから、個人としても資産運用の検討を急がなければならない。
水面下では国債リスクがクローズアップされているらしい。当然と言えば当然だが、大きな声で言えないから、世間に聞こえてこないだけなのだろう。これまでも国債が危ないのではないかと何回も言われてきた。今回も狼少年的な部分がゼロとは言わないが、でも国債リスクの水位は回を追うごとに高まっている。
国債リスク(日本政府のリスク)が顕在化し、日本国債を買いたいという投資家が少なくなれば何が生じるのか、これが問題である。リスクを顕在化させる契機は何でもいい。本当のところは誰にもわからない。だから、「そんな最悪の事態が生じた時、何が起こるのか」、「それに対して今から何ができるのか」をシミュレーションしているわけだ。
昨年春のギリシャの状況からも明らかなように、当然、日本国債が売られ、価格が大幅に下落する(金利が大幅に上昇する)。それにともない、円が売られるのもほぼ確実である。日本の金融市場からできるだけ早く、できるだけ多くの資金を逃避させるのが資金運用者の責務となる。タイタニック号ではないが、沈没しそうな船から乗客が我先に逃げ出す光景だ。それで本当にいいのかどうかは疑問だが、仕方ないだろう。
円安になれば、輸入物価が急速に上昇する。原材料価格も上昇するから、企業は製品価格を上げないといけなくなるわけだが、それに国内経済が耐えられるのかどうか。もちろん、スーパーで買う食料品の価格も上昇してしまう。
このとき、国債を大量に保有していれば資産を逃避させるのは非常に困難になる。この典型が銀行である。銀行は大量の国債を保有しているため、その資産価値が大きく痛む。政府として銀行を潰せないから、預金を心配する必要はない(100万円は100万円として引き出せる)だろう。しかし、銀行が資金を貸し出せるのかどうかが大問題となる。銀行の資産が痛むため、自己資本が減少し、資金の貸出余力が大きく落ち込む可能性があるからだ。
公的年金も大量に国債を保有している。時価評価すれば資産が大きく痛むため、年金に対する不信感が高まるだろう。実際は、1万円の年金を1万円として払い続けることになるかもしれない。しかし、輸入物価の上昇により、円の価値が下落しているから、同じ1万円であっても、直前までの1万円と比べれば値打ちが落ちてしまっている。
これらを総合すると、景気の悪化と金融の混乱によって、企業収益も悪化する。資金の海外逃避も金融市場に大きく影響する。この結果、日本企業の株式も売られるだろう。しかし、売られ方はまちまちである。完全に国内経済に依存していて、かつ財務体質の弱い企業は倒産するかもしれない。一方、海外にも大いに展開していて財務体質の強い企業は、瞬間的に株価が下落するかもしれないが、立ち直りも早いだろう。
とりあえず、以上を想定しておく必要がある。続きは後日に。
2011/03/08