川北英隆のブログ

円安への片道切符

昔、恋の片道切符という歌があった。今日は自転車の片道切符、大学まで乗っていった自転車を中国人の留学生に進呈した。その留学生が質問するには、円安への為替介入は間違いではと。
鋭い意見である。実は大震災直後の為替介入が正しいのかどうか、先週、さる場所で疑問が提示されたところだった。原発がダメになり、火力発電所用の燃料を大量に輸入する必要が出てきたから、むしろ円高のほうが海外から安く買えて望ましいのではないかというわけだ。
前にもブログで書いたと記憶しているが、円高は日本にとって望ましい。円の価値が上がると、同じ円でより多くの品物やサービスを買えるからだ。1970年代の後半、円高が急速に進んでいた時代にも、円高か円安か、どちらが望ましいのかとの議論があった。当時は円安派の方が優勢だったと思うが、我々のボスは円高派だった。その後、20年近く、円高が進んだにもかかわらず日本の地位が向上した。思うに、日本に力があったから円が高くなったのだと思うが。
大震災後の円売り介入は「急速な円高を阻止する」ことにおいて意味があったと思う。しかし、それによって為替市場の潮目が変わり、震災による日本のダメージが広く世界に認識され、長期的な円安の流れが思いの外早く実現してしまう可能性も高まってきた。
震災の前、「今が最後の円高」と金融のプロが語るのを横で聞いていた。奇しくも、その御宣託が当たり、これから円安への片道切符が始まるのだろうか。

2011/04/01


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