川北英隆のブログ

日本株式市場の悪弊

世界と比較し、日本の株価が戻らない。少し戻ったと思ったら大震災の影響を受けた。原因がどこにあるのか。不運にも天災に遭遇したためか、もしくは基本の何処かが間違っていたためか。
結論は、基本が間違っているためだと思わざるをえない。間違ったのは上場企業だけでない。政府の政策の間違いも指摘する必要がある。
電力株の価格下落で金融機関が多額の損失(評価損)を計上するという。当事者の東電だけでなく、他の電力会社の株価も下落している。原発の設備に追加コストが必要なだけではない。「原発税」、「強制的寄付金」とも言うべき上納金を政府が要求しようとしていて、しかもその金額が不確定だからである。料金認可業種だから仕方ない側面もあるが、電力会社には多数の個人株主がいる。株式市場を無視した政策を政府が続けるものだから、要するに株式市場が公的なインフラだとの認識がないから、個人株主にまでに原発事故のしわ寄せが行き、市場が重傷を負い、世界から日本が完全に取り残されようとしている。
東電もまた、通信事業の売却の対価として取得したKDDI株の保有を続けていた。事業を売却したのだから、その事業に関する株式をその後も保有するのは、「売却」という経営判断と矛盾する。
この点は株式持ち合いの「うるわしき伝統」と同じである。何のために上場し、さらに他社の株式を保有するのか。その経営的判断の是非が問われている。株価が上昇しない日本と市場、そこに上場することの意義が問われてしまう。
今日(4/26)の大機小機に「純資産の時価変動を損益に反映する・・・包括利益は、企業経営の発想ではなく投資家の発想である」と書かれていた。筆者の意気込みは分からないでもないが、正確には「包括利益は、尊敬すべき企業経営の発想ではなく」というように書くべきだろう。
胸に手を当てて考えるべきは、無駄な資産たとえば株式を企業が保有し、それが時価の変動にさらされ、大きな損失を被ったとして、「国際会計基準が悪い」と経営者が主張できるのかどうかである。「アンタこそアホや、無能やで」と言われるのが落ちである。そんな経営者の弁護をいくら書いたところで何の意味もない。むしろ、悪である。
包括利益に問題点が多いことは確かである。しかし、会計制度を批判する前に、わが身をただすのが正統派の経営者だろう。日本では正統派の経営者が絶滅危惧種だから、日本の株価が世界から取り残されてしまっている。

2011/04/26


トップへ戻る