リーマンショック、アラブ諸国の連鎖的革命、東日本大震災と大きな事件が相次いでいる。これらを想定外だと位置づけるのは短絡的である。過去の判断に重要な何かが欠けていた。
見落としていた、もしくは無視していたことがあった。サブプライムローン問題とリーマンショックは、証券化の急速な発展に金融システムの見直しが追いついていなかったために生じた。証券化を金融技術に過ぎないと過小評価していたため、経済活動全体に対する影響を正当に評価できていなかった。アラブ諸国の革命は、その地域の社会的歪みを当時の政権が長年にわたって無視し、また強制的に抑圧してきたから、一気に爆発したのだろう。東日本大震災は、もしも原発事故がなかったのなら単純な大震災で終わったはずである。その原発は、原発元年以来一貫して唱えられ続けた「絶対安全」を誇示するため、最新の知見を取り入れることなく放置されてきた。
いずれも過去に引きずられすぎた過ちである。
言えることは、過去にこだわることなく常に状況判断を行い、その過程で反省点が生じたなら、すぐさま新たな戦略を練り上げることの重要性である。場合によっては、過去の経営判断をきっぱりと捨て、白地に絵を描く覚悟も必要だろう。そのためには事業の柱を複数保有することが望まれる。事業の分散である。
大震災後、工場などの立地条件の改革を図る企業が多くなっている。地理的な分散効果を狙ったものである。一方、複数の事業は経営手段の無駄遣いにつながりかねず、それを避けるために事業の集中を図った企業もある。しかし、集中はリスクの高まりと表裏一体である。集中と分散を調和させる能力がプロたる経営者に求められている。
大震災や原発事故に直面して経営がいかに判断するのか。企業は重大な岐路に立っている。
2011/06/03