それにしても鮮やかな内閣不信任圧決議案への対処だった。政治にはあまり関心がなく、大きな期待をしているわけではないが、政治が経済の足を引っ張るとなると関心を持たざるをえない。
トップに立つものは自らを律しなければならない。どんな組織であっても、トップの行動をいちいち律する規定が完備していないからである。
某トップは、来年辞めることが明白な子飼いの構成員を将来の人事案作成の責任者に立たせているという。自分に敵対しそうな構成員の新規採用を回避して、自分の地位を保全するためである。また、某関西組織のトップは、海外出張のために成田発の便を選択するという。そのトップは規定上ファーストクラスに乗る資格があるのに、関空発の便にはファーストクラスが設けられていないからだそうだ。これらが事実であり、その噂が世間に広がったら非難轟々だろう。
そこで菅政権だが、内閣不信任圧決議案の動きに対して、まずは「衆議院解散」で民主党の構成員を脅した。それが十分な効果を発揮していないと察知し、「退陣ほのめかし」作戦を打ち出し、内閣不信任圧決議案を鮮やかに否決してしまった。その後は、具体的な「退陣」の時期をめぐって民主党内での対立が続いている。
この一連の進行によって何がもたらされるのか。1つは菅政権が命を長らえたことである。いつまでかははっきりしないが、「いずれ退陣する」ことだけは確実である。もう1つは、今後の国会がますます紛糾することである。菅政権が悪いのか、他の民主党員が悪いのか、はたまた野党が悪いのかはともかく、これらさまざまな勢力の妥協点を見出すのはますます困難になったことも確かである。そもそも今年度の予算の財源さえ目処が立っていないことを考えると、政治の混乱が経済の混乱をもたらすのは必至の情勢だ。
今回の事件は、トップが自らの目先の利益を図ることにより、組織全体の長期的な利益を害してしまう典型例だろう。
2011/06/04