川北英隆のブログ

法人企業統計の分析

今年1-3月期の法人企業統計が公表された。この統計で注目しているのは、以前にも書いたことがあると記憶しているが、売上高付加価値率の推移である。
ここで付加価値とは、国民経済計算にならい、営業利益、人件費、減価償却費の合計である。この付加価値が売上高に占める割合を計算し、その推移を観察すれば、製品の魅力度や競争力の指標になると考えている。
製造業のうち大企業(資本金10億円以上)について1-3月期の(正確には、季節性を除去するために1-3月期を含めた4四半期を合計して)売上高付加価値率を計算したところ、18.5%だった。これは2007年10-12月期の18.4%を少し上回るが、サブプライムローン問題の生じた2007年7-9月期の18.8%を下回っている。製造業・大企業の売上高付加価値率は1995年以降、長期的に低下傾向にあるのだが、その傾向が依然として続いているようにみえる。
売上高付加価値率の内訳として、売上高営業利益率をみると、1-3月期は3.7%でしかない。サブプライムローン問題以前は6%に近かったから、企業利益の水準はまだまだ低い。これは人件費率が10.5%と、サブプライムローン問題以前よりも1%ポイント程度高いことにもよる。最近の大企業は人件費削減効果で付加価値率の低下をしのぎ、何とか利益率を確保してきたが、この分ではさらに一層の人件費削減を実施しなければならないのかもしれない。もっとも、人件費削減は国内需要の低下を生み出し、またデフレ効果となり、巡り巡って企業の売上高や利益にマイナス効果をもたらすのだが。高度成長期に生じた、「所得の増加、需要の増大、企業の成長」というサイクルの逆が生じているわけだ。
なお、法人企業統計は国内企業だけのものである。海外の現地子会社は含まれない。日本企業で儲かっている企業は、結局は海外で稼いでいるということになる。

2011/06/15


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