日本株がPBR(株価純資産倍率)で見て安値に放置されている。上場企業の平均PBRはほぼ1倍だから、企業を解散して保有資産を現金にし、その分け前を株主に分配してもらってもかまわない。
むしろ、企業があれやこれやと業務を行うのは徒労でしかない。早く解散してもらった方がいいのではないか。そんなことが日本の株式市場に関する影の話題になっている。どこかの内閣に関して聞いたような話だが。
注意すべきなのは、この議論は平均値に基づくものでしかないことだ。そこで、2005年1月から10年12月までの6年間、株式に投資して儲けることができたのかどうか、上場企業ごとに計算してみた。ちなみに2005年1月はライブドアのホリエモンがニッポン放送株を大量取得し、フジテレビとの間で経営権をめぐって争った時期に相当する。ある意味、日本の株式市場に一時的に活気がみなぎっていた時期である。その後、2006年にはライブドアが東京地検の捜査を受け、07年にはサブプライムローン問題が生じ、08年のリーマンショックによって日本市場はどん底に突き落とされた。
この6年間で東証株価指数は14%下落している。しかし、同じ間、継続して上場していた企業(連結決算を公表していた企業で金融機関を除く)1214社のうち、436社が値上がりしていた。また、1.1倍以上になった企業(すなわち10年国債への投資によって得られる金利以上の投資収益率をもたらした企業)は335社あった。儲かった企業も相当数あったわけだ。
以上から、日本株式に投資できるが、日本株をまんべんなく(東証に上場している企業を平均的に)保有するのは良くない、企業を選別すべきだと考えられる。
では、企業を選別する基準は何なのか。以前から推奨しているのは、日本の場合は海外展開力である。海外に展開しても十分な競争力を潜在的に有しており、かつ経営的な意欲のある企業ということになる。実際、海外展開した日本企業には、この6年間、投資家に利益をもたらした企業が多く含まれる。要するに、株なら「何でも良い」わけではない。
当たり前のようだが、実はそうは考えず、上場株式というだけで「何でも良い」と思考停止的にまんべんなく投資する投資家が非常に多いのも事実である。もちろん理論的裏付けがありそうなのでそうしているのだが、果たして今の日本に「理想を想定して導いた」理論が通用するのだろうか。
2011/06/21