川北英隆のブログ

日本の株式は買えるのか2

さる原稿を書いていて、日本株式を買えるのかどうか計算した。「この程度のものやろ」と数字を置き、計算したところ、「買えない」との結論になった。そこで、どうなれば買えるのか逆算した。
計算の前提は、国債金利が1.5%、株式市場全体のリスクプレミアムが4%、企業の負債コストが1.9%(長期貸出・約定平均金利)、資本構成は現在の平均値を用いた。この前提で資本コスト(企業が調達する資金のコストの平均値)を計算した。一方で、長期投資の観点から、企業の総資産営業利益率(2001年から2010年までの10年間の平均値)を計算し、両者を比較した。
その結果は、製造業、非製造業ともに「買えない」となった。資本コストを利益率が下回ってしまっており、投資家に十分なリターンを与えられなかったことを意味する。
負債の提供者(銀行や社債権者)は契約した金利をもらえるから、結局のところ、日本の株式に投資したとしても、4%のリスクプレミアムは得られなかったことを意味している。
では、株式投資から何%のリスクプレミアムなら得られるのか(期待できるのか)。他の条件を変えずにリスクプレミアムを2.8%にすれば、ほぼ買えるとの結論が得られた。つまり、4.3%(=1.5+2.8)程度のリターンなら期待できるということである。
もう1点、以上では株価の妥当値を計算していることになるので、前提条件として長期的な安定値を想定しなければならない。この点、国債金利を1.5%と想定したのは低すぎかもしれない。金利の水準を0.5%上げた場合(つまり国債金利は2%)、リスクプレミアムを2.1%にすると株式はほぼ買える計算になる。この場合株式の期待リターンは4.1%である。
以上は、日本株式の平均値である。その程度のリターンで満足するのかどうか、それを投資家に問わなければいけない。しかし、この10年間、市場平均株価は上がっていない。株式投資家はこの程度の期待リターンでは満足していないのだろう。

2011/07/10


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