東日本大震災を理由に国際会計基準の適用を延期するらしい。「やはり」と思うのは、以前から上場企業に拒絶感が強かったからである。大震災を格好の理由に仕立てたとしか思えない。
かつての会計基準の内部者なので詳細な発言は差し控えておくが、国際会計基準の適用を回避したい、回避できないのなら、今の日本基準に近いところで何とかならないのかとの意見が強かったように記憶している。
個人的には、実のところ国際会計基準には理解不能の部分がいくつかある。ヨーロッパの委員は会計しか知らないのではないかと思ってしまう。ファイナンス的に必要な事実に理解がまったくない(たとえば基準において、製造、販売に必要な人件費や減価償却の細目が開示されていない)。また、保険の時価会計を取り上げれば、そこには「自己創設の暖簾」の問題があるし、その負債の時価評価については、長期評価を短期評価の継ぎ合わせで間に合わせるものであり、プロシクリカル的な評価といえる。
とはいえ、米欧日(地域名は力の順)が議論して統一のルールを作るのだから、できたルールに従わないのは混乱そのものである。上場企業なら、世界市場の場外で乱闘しようというに等しい。勝手に乱闘してもらっていいのだが、投資家にとっては迷惑千万だ。投資家が統一的基準に基づいて上場企業を評価できないのなら、半分非上場になったも同然である。
ということで、日本の投資家として賢明な選択は、企業が国際会計基準を選択するかどうかを試金石とし、それを選択しない企業に投資しないことである。大手の年金は上場企業にまんべんなく投資するインデックス運用を主たる投資戦略として選択しているが、今後は見直すべきだろう。いずれにせよ、自国に閉じこもるか(つまり鎖国するか)、理不尽な点はいずれの時にか解決しようと決心して海外に打って出るか、その選択の差は企業経営の評価に大きな違いをもたらすだろう。
2011/07/02