食べ物シリーズを、山登りや海外を題材としてしばらく続けてみたい。まず思い出すのは、最初の海外登山だった台湾である。1991年、今から20年前だから、台北が田舎風だった頃だ。
当時の台北のごちゃごちゃした感じが好きだった。昔の上海が好きだったのと同じである。台北市内のホテルに着き、適当に食堂に入って喉を潤すために、ビールとつまみを注文した。その中の一品がピリ辛風味のニワトリの脚の先だった。3つに分かれた脚先(ツメ)の皮の部分をしゃぶるのだが、飼われていただろうニワトリ小屋の床の状態をイメージすると、ツメにまだ名残がありそうで、あまり食べる気がしない。しかし、かつて香港に駐在したことのある山の師匠は、「これが中国」と言って喜んで食べていた。
玉山の中腹にある民家に泊まった夜は、ニワトリやら筍やらが食卓に出てきた。5月の連休だったから、野菜といえば筍だったようだ。かなり歯ごたえがあった。ニワトリは骨も多かった。要はぶつ切り風ということ。食べると味がしてきて美味いが、骨を出し、よく噛んでゆっくりと食べるしかない。翌日の明け方、ニワトリがしきりと鳴いていた。宿泊客があると何羽かが接待役を仰せつかるのだろう。
玉山の頂上直下の小屋では自分達で食事を作るので思い出はない。覚えているのは、中国人が夜中まで騒いでいたことと、初めての高所(3500メートル付近)での宿泊だったので軽い高山病になったことだ。
下りてきて、台中付近のドライブインで昼食となった。そこでも筍が出てきた。こちらはすごく筋のある筍だった。でも、山から降りてきた者にとって、まあまあの料理だった。
今の台湾はどうなっているのだろうか。久しく台湾に入っていない。最後に行ったのは台北駅の高層ビルが完成する直前だった。料理は格段に良くなっているのだろう。しかし、「日本と一緒やん」との文句も出てくるだろう。20年前の食事は、内容はともかく、印象深いものだったから。
2011/07/11