海外旅行で一番気楽に行ける国は韓国である。日本人ならほぼ誰でもそうだろうと思っている。初めて韓国に行ったのは1998年3月だった。その約半年後、経済危機を調査しがてら山に登った。
韓国は3日あれば行けるから、会社を1日だけ休めばよかった。そんなの、すごく簡単である。とくに、経済危機=アジア通貨危機の実態を調べるなんて理由があれば、「じぁあね」というところだ。
しかし、思い出してみれば、担当していた日本経済というか日本国債の価格が乱高下するようになった時期でもあった。そう記憶している。担当している市場に火が付き始めていたのに、隣の火事を見に行ったようなものだ。
それはともかく、ソウル郊外の北漢山に登るつもりでホテルの玄関でタクシーに乗り、地図を指差した。「OK」という雰囲気で、それらしい登山口まで運んでもらったが、どうも入手していた地図と登山道とがうまく合わない。歩いて数歩のところにあった読めないハングル文字の案内板と、持っていた地図の文字とを数分かけて?比べたが、やはり違う。
でも「山だから、まあええか」ということで稜線まで登った。登り着いた稜線の北側、それなりに離れた所に目指していたはずの北漢山の岩峰が見えた。その時登ったのは多分、文殊峰だと思う。所々雪が積もっていて、それなりの雰囲気のある山だった。
その夜は近くの高級ホテルのレストランで韓国宮廷料理を食べた。経済危機でウォンが暴落していた時だから、すごく満足したにもかかわらず、安かった。一緒に行ったいつもの相棒が、前菜として出てきた栗の剥いたのを床に落としてしまった。でも、我々の世代なら誰でもするだろうが、何もなかったかのように床から栗を拾い、さっと表面を拭いてから口に入れた。今でも家内と大笑いする食べ物ネタだ。
2011/07/31